LINEUP

MOVIE

『たからものばこ』

監督:細川那奈、大野賀世、ジェイ・ペピト

 独りで淡々と余生を過ごすカズヨシ、70歳。ある日、6歳の孫コウが初めて家を訪ねてくる。好奇心旺盛なコウは、書斎にある本に興味を示し、落書きをして遊び出してしまう。書斎が散らかっていることに気がついたカズヨシ。コウは慌てて部屋から逃げていく。こうして、カズヨシは渋々部屋を片付ける羽目に。そんな中、とある古ぼけた箱を見つける。すると突然、箱が大きくなり蓋が開く。中を覗き込むと、階段が続いていた…。


『彷徨う五本指』

監督:中村瞳太

 職を失って今まで誰かに必要とされていた立場の男が、その空白を埋める為に様々な人々に干渉していくが中々上手くいかない。

そんなときに出会った一匹のブラックバスが自分を必要としている存在と思い込み、溺愛しながら飼育を始める。

しかし、ブラックバスは人間に頼り切りの生き方になってしまうことを危惧しだし、男とブラックバスとの間に亀裂が生まれ始める。


『AWAY』

監督:タケウチユーイチ

 親友の邦弘が消えた。雄一はその日を境にすっかり変わってしまい、学校にも姿を見せなくなる。

そんな雄一を求めて、快人と名乗る少年が都会からやってくる。初対面で戸惑う雄一を驚かせたのは、快人があの邦弘の友達だという事実だった。

雄一と快人。"邦弘"という唯一の接点に新しい友情を感じた2人は、やがて「本当の居場所」の存在に向きあっていく。

何かから逃げ続けていた2人は、何かを追って、走り出す。


『しかと青くあれ』

監督:栗原翔

 ある一軒家から家の外をハンディカムで撮影している一人の女の子・ユキ。

彼女は育ての親である祖父が亡くなり、一人で祖父の家で暮らしている。

ある日、家にやってきたのはユキの兄である黒田。

両親から妹を引き取るように頼まれ町にやってきたのだが、ユキは家から離れようとしない。

仕方なく少しの間、町に滞在することにした黒田。

徐々に今は亡き祖父の存在に近づいていく黒田はある日、町の交番に勤務している春吉という警察官に出会う。


『カルチェ』

監督:植木咲楽

 とある街、トウキョウ三区。そこにある9号プールの中から、少女が生まれた。プールの管理人であるソノダは、少女と共に七ヶ月暮らすことになる。少女・エンは三区の様々な人と出会い、別れながら日々を過ごす。

同じ頃、大阪の美章園でゲストハウスを営む園田章。章は妊娠しており、つわりがひどく、花を主食にしている。


『オーファンズ・ブルース』

監督:工藤梨穂

 砂が風に吹かれて無くなっていくように、記憶が彼女から剥奪されていく。

夏が永遠のように続く世界で生きるエマ。彼女の元にある日、幼馴染であり現在行方不明のヤンから象の絵が届く。エマはその消印を元に彼を探す旅に出る。道中でヤンの弟であるバンに出会い、その彼女と共に旅を続けるが…。

誰かを思い出せなくなる苦しみと忘れたくない思い、忘れられ名前を失っていく悲しみが疾走する。それでも彼らは光を呼吸する。

SCENARIO & MONOGRAPH

『クジラのスプーン』

宇佐美小晴

中学生の雫は、バツ2の母親から「実は異父兄弟の兄がいる」と知らされる。

兄の名前は秋生で、最初の結婚相手との子どもだという。

そして秋生の両親が旅行に行っている間、雫の家で一緒に暮らすことになった。

しかしある夜、秋生は突然姿を消してしま う。

大学生になった雫は、思わぬ出来事から大学教授・直文と話すようになり、

直文の妻・ 絵里子の浮気調査に協力することに。

しかし絵里子の元に現れたのは、秋生で―――


『EXPO』

大野智也

アンドロイドの暴走により駆除を迫られる軍需会社の社長の母、レイラ。

人工授精で生んだ娘のアイリスとは関係が希薄していた。

デザイナーベビーとして生まれた自分の存在を疑問に思うアイリスは父親を探しに地球へ家出する。


『硝子の涕』『Ellie』『箱の中の小さな青』

松見育穂

3本で1つのシリーズものを書きました。シリーズものとは言っても、1つひとつ単体で読んでも楽しめるものになっています。3人兄弟の話で、各脚本の主人公が姉、長男、次男の物語になっています。

ぜひ楽しんで読んでみてください。


『硝子の涕』

死ねない身体を持ったジンが死神と名乗る少年と出会い物語が始まる

『Ellie』

エリが自身の夢と彼氏どっちを選ぶか決断を迫られる

『箱の中の小さな青』

シュウが文化祭を成功させようと仲間と奮闘する



善悪の彼岸」にある美

閤師沙也華

かつては、自然であることが最も美しく、善であるとされていた。

それは、古代ギリシャの自然観からきている。

だが、近代化するにつれて女性はヘアメイクを自らに施し、人工的な美を追い求めるようになってゆく。それは自然に反する行為であり、古代からの〈真善美〉の尺度で見れば悪である。

自然に逆らう、近代の美は全て悪であるのか。

この論文では、不確かな女性の美について論じてゆきたい。


ルシール・アザリロヴィック監督作品における「境界線」について

西嶋美土里

ルシール・アザリロヴィック監督の『エコール』と『エヴォリューション』における

「境界線」から浮かび上がる諸問題を探究する。

前者では、少女だけからなる「学校」が舞台になり、「森」が現実との間の「境界線」になる。

後者では、少年と「母親」だけが暮らす「島」が舞台になり、「海」が「境界線」になる。

いずれの場合も「境界線」は子どもを閉じ込める障壁にして、彼らの「無知」を守るシェルターのような両義性を孕む。